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“死力を尽くした”藤田さいきに申ジエの言葉 メジャー会場で胸打たれたベテラン選手たちが感じる“大舞台”の「重み」【現地記者コラム】

ベテラン勢の“奮闘劇”からメジャーの価値を感じた。

所属 ALBA Net編集部
高木 彩音 / Ayane Takagi

配信日時:2025年5月15日 15時00分

国内女子ツアーには4つのメジャー大会がある。先週の「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」、9月の「ソニー 日本女子プロ選手権」、10月の「日本女子オープン」、そして最終戦の「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」だ。選手たちにとっては、この舞台が大きなターゲットにもなる。そして今年のサロンパスカップは、37歳の申ジエ(韓国)が39歳の藤田さいきとのプレーオフを制し大会最年長Vを挙げたが、著者は特にベテランたちのメジャーにかける想いに胸を打たれた。

【写真】力尽きておんぶで運ばれる藤田さいき

首位の藤田に2打差の2位で最終日を迎えたジエは、3日目のラウンド後に、こんな言葉を語っている。「公式戦の“重み”がある。その重みに耐えうる精神力が大事」。国内メジャー制覇は今回で5度目。2008年、12年には「全英女子オープン」にも勝っている。まさに“百戦錬磨”。ただ、最近はメジャーという舞台に、こんな気持ちで向き合っている。
 
「正直、20歳ぐらいの時は『これからまだたくさん(メジャーで勝てる)チャンスがある』と思っていました。ただ、今は『あと何年プレーできるのだろうか?』と考えることがある。20歳の時よりも体力も落ちているし、昔みたいにチャンスがたくさんあるわけじゃない。1試合、1試合への気持ちが少し重くなりました」

プレーオフを制し、両手を上げて中川桂輔キャディと喜ぶ申ジエ

プレーオフを制し、両手を上げて中川桂輔キャディと喜ぶ申ジエ (撮影:福田文平)

柔和な表情の奥には、そんな覚悟がある。一方、敗者になった藤田は、ジエとのプレーオフを終えた後、自力で歩くことができず、救急搬送された。前週の「パナソニックオープンレディース」を棄権し、週末は39.5度の熱で寝込むなど、開幕前から体調不良を抱えていた。首位で終えた大会3日目も、微熱がある状態で「68」でプレーし、本人も「奇跡」と話すほどだった。この状態で戦う理由を聞かれると、「メジャーですから」と即答。そして「あまり言ってはいけないですが、(メジャーでなければ)100パーセント休んでいますね」と続けた。
 
最終日も体調は回復せず、木陰で休みながら、時に苦悶の表情を浮かべながらのプレー。“メジャーチャンピオン”という称号が、選手たちを突き動かしている。そして、こういった姿勢は若い選手たちと、少し異なる部分を感じた。

プレーオフを終えてクラブハウスに戻る藤田さいき

プレーオフを終えてクラブハウスに戻る藤田さいき (撮影:米山聡明)

例えば、前週優勝者として臨んだ菅沼菜々は「3年シードはすごく魅力的。頑張りたいです」と、複数年の職場確保が約束されることに価値を感じていた。初出場したルーキー組の入谷響は「ポイント稼ぐには、このメジャーとか4日間大会が1番大きいので、そこで取りたい気持ちが大きい」。同じく新人の荒木優奈も「優勝すれば3年シードだし、上位に行けばポイントを稼げる。シードが取りたいから大事な試合」と話した。

これらは、もちろんプロゴルファーにとって大事なのは言うまでもない。ただ、ジエの「公式戦の“重み”」や、藤田の「メジャーですから」という言葉とは、趣が異なる。なかには、プロとしてキャリアを積むにつれ、メジャーというものの考え方に変化があらわれる選手もいる。

ツアー通算11勝の27歳・小祝さくらは、20代前半には「毎年メジャーだからと思ったり、モチベーションが上がったりすることがない」と話していた。しかし、同級生の原英莉花、勝みなみらがメジャーで勝つ姿を見て「いつかは獲りたいという気持ちが強くなりました」と22年あたりから心境に変化が。今大会では「ここまで来てメジャーだけ勝てていない。メジャータイトルは獲りたい」と、強い眼差しで意気込んでいた。ここ数年は、年初の目標にも「メジャー優勝」を設定している。

ツアー11勝の小祝さくらが考えるメジャーへの想い

ツアー11勝の小祝さくらが考えるメジャーへの想い (撮影:福田文平)

逆に、こんな心境を話す選手も。7年ぶりに地元・茨城でのメジャーに出場した畑岡奈紗は、もともと「プロになってから4、5年は『今週はメジャーだから』という気持ちがあって、準備する上でフラットな状態で…というのは意識していました」と、力を込めていた。しかし今は、「メジャーだからといって何かを変えてもいいことはない。その週に(特別なことを)やっても遅いというのは、(いままで)やってきて学んだこと。自分でいい準備をしてするだけ」という考え方に変わっている。キャリアを積むにつれ、「絶対に取りたいタイトル」だからこそ、備え方にも変化が起きているように感じた。

いわば、メジャーで得られる“メリット”から“名誉”へ。国内は年に4試合、海外も5試合しかない大舞台で勝つことの難しさをキャリアを積むにつれ知り、そのとらえ方にも変化が生じているようにも思えた。

メジャー4勝の畑岡奈紗には心境の変化があった

メジャー4勝の畑岡奈紗には心境の変化があった (撮影:福田文平)

1981年の「日本女子プロ選手権」優勝者で、今大会では広報の業務に携わった鈴木美重子に話を聞くと、よりその“重み”という意味を知ることができた。「公式戦以外の大会はスポンサーの存在によって開催がなくなることもあるけど、メジャーは長く残る大会。賞金だけではなく“一生名前が残る”でしょ。そこが一番大きいのではないかな」。ツアーから離れてもなお、“メジャーチャンピオン”という肩書は色あせない。そして、この“一生名前が残る”という言葉が胸に響いた。

もちろん、メジャーで勝ちたいという気持ちはどの選手も同じ。ただ、今回の一連の取材で感じたのは、そのキャリアの時々で“メジャーのとらえ方”というものは変わっていくのかもしれない。国内ツアーの公式戦は今季残り3試合。そこで起こるドラマの背景にある選手の心情を、これからも知っていきたいと思った。(文・高木彩音)

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